タバコは、吸う本人の健康によくないばかりではありません。タバコを吸わない周囲の人たちの健康にも悪い影響を与えることが明らかになり、今や社会問題となっています。
タバコを吸っていると肺がんにかかりやすいということは、皆さんもお聞きになったことがあると思いますが、タバコが原因となって引き起こされる病気は他にもたくさんあります。そこで今日は、タバコの恐ろしい害について勉強しましょう。
タバコの煙には約4,000種類以上もの化学物質が含まれており、そのうちの200
種類以上は有害化学物質です。それは、気相すなわちガス相と、粒子相に分かれ、気相成分には、発がん物質や、線毛細胞を破壊する物質、その他の有害物質が含まれています。
粒子相成分には、3,4ベンツピレンの他多くの発がん物質や、線毛傷害物質、ニコチンなどの有害化学物質が含まれています。タバコの煙は、まさに”有害化学物質の缶詰”であるといえます。
タバコの煙の中に含まれる有害物質の中で特に重要な物質をあげると、発がん物質、ニコチン、一酸化炭素,刺激物質の4つのグループに分けられます。そして、一酸化炭素や、刺激物質などは、フィルター付タバコでもほとんど除くことはできません。これらの有害物質は吸う本人にいろいろな病気を引き起こすだけでなく、お腹の赤ちゃんから、周囲の人たちにもそれぞれ健康に悪い影響を及ぼします。
1本のタバコに含まれている発がん物質やタールは極微量ですが、1日に20本、30
本と吸い続けていると,「塵も積もれば山となる」の諺どおり、長い間に肺は真黒一。 そして肺がんによる死亡率は、l日15本から24本吸っている人で、タバコを吸わない人の約5倍、1日50本以上のヘビースモーカーでは約9倍という恐ろしい結果になります。 しかし、タバコをやめた人では約2倍にとどまっています。
また、タバコを吸いはじめる年齢が早いほど、肺がん死亡の危険性が高くなっています。その死亡率も未成年の時にタバコを吸いはじめると、吸わない人の5.5
倍と危険性が大きくなっています。
タバコの煙に含まれているタールの量は、1日に20本吸うと、l年で110グラムから150グラムコップに軽く一杯相当になり、30年間タバコを吸うと、コップにほぼ30杯ものタールを吸い込むことになります。
このように、タールなどの有害な化学物質を吸い続けていると、終いには、肺が真黒に汚れてしまいます。この写真は、タバコを吸わない人の肺と、肺がんに侵された患者の肺を比較したものです。
もちろん、肺がんの原因は喫煙だけではありません。大気汚染、職場で吸う有害な粉塵やガスの影響,胸部疾患の既往症のあるなしや、遺伝なども肺がんの発生に関係しているといわれています。しかし、それらの諸因子と比べて、喫煙の影響が抜群に大きいことが明らかにされています。
日常生活の中の、食事の内容と肺がん死亡率の関係を調べてみても、やはり喫煙の影響がずば抜けて大きくなっています。
がんによる死亡の中で、肺がんは、胃がんに次いで2番目に多く、しかも、胃がんの死亡率が減少してきているのに対して、肺がんの死亡率は急激に増えてきています。
その肺がん死亡率の伸びを、年齢構成の変化を補正した訂正死亡率でみても、男女ともに最近急増しています。この増加現象の原因の一つに、タバコ消費の伸びがあげられます。タバコがすべての原因ではありませんが、肺がん死亡に大きな影響を与えていることは確かです。
がんはいまや死亡原因の第一位となっていますが、その中でも肺がんが急上昇してきているという事実は、がんによる死亡を減らすために喫煙対策がいかに急を要する課題であるかを物語っています。
タバコを吸っていると、肺がん以外にもいわゆるタバコ病といわれる一連の病気にかかりやすいことが,明らかになっています。タバコを吸わない人と、吸う人の死亡率を比較してみますと、喉頭がんで20.3倍、口腔がんで4.6倍と高くなっています。その他のがんや、心臓病、肝硬変、胃、十二指腸潰瘍も死亡の危険性が大きくなっています。
従って、喫煙者の死亡率は、平均すると、吸わない人の1.2倍から1.7倍高くなっています。そのために、喫煙者の寿命も、2年から6年位短かくなっています。また、英国王立内科医学会では、タバコを1本吸うごとに、平均して寿命が5分30
秒短縮すると報告しています。ということは、1日に20本もタバコを吸う人は、約2時間も寿命を縮めることになります。
また、喫煙者は疲、咳のほかさまざまな自覚症状に悩まされます。肩こり、手足のしびれ、まぶたの腫れ、首のこりなどはニコチンによる未梢循環障害作用と考えられます。さらに、食欲減退、胃の痛み、下痢などの消化器症状もタバコの本数に比例して高くなっています。
症状の中で多いのが咳と疾に表れる慢性気管支炎症状です。タバコの煙には各種の刺激物質が含まれていて、気管支腺を刺激して粘液分泌を高進させたりしますので、慢性気管支炎症状が起こりやすいのです。このグラフは、慢性気管支炎症状の有症率を年齢別に見た場合、男女ともに、喫煙本数が多く年齢が高くなるほど増えています。
またタバコを吸っている人は、吸わない人に比べて肺機能が低下しています。自分はタバコを吸わなくても、タバコを吸う人と長年生活したり、一緒に仕事をしてきた人にも、同じような肺機能障害が認められます。
ではここで、私たちの肺・気道内部の様子を見てみましょう。これは、顕微鏡で拡大してみた図で、左が気管支の横断面です。実に繊細な細胞、組織層から成り立っています。青い線で囲った部分が気管支粘膜上皮で、その部分を拡大したのが右側の断面図です。表面に線毛が見えます。
気管支を覆っている線毛は、協調して動き、入ってきたタールや埃を必死に外へ出そうとする,、ベルトコンベヤーのような働きをします。
ところが、タバコを1日30本吸っている人の場合では、左側のように線毛がところどころ剥がれ落ちてしまっています。これではベルトコンベヤーもうまく働きません。
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